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HaruP WorkS

シンセサイザーやボーカロイドで制作したオリジナル音楽をこっそり紹介

 

シンセの神様・冨田勲の機材(TOMITA Memorial Museum)レポ2 

レポ1からちょっと間が空いてしまいましたが、世界的なシンセサイザー・アーティストである故・冨田勲さんの往年の機材を展示したTOMITA Memorial Museumについての続きです。

※文中に出ている写真は特設ステージに並べられた冨田さんの往年の機材で、松武さんとは冨田さんに師事したことのある日本シンセサイザープログラマー協会の会長の松武秀樹さんのことです。トークショーでの説明を要所で参考にしております。

●繋ぐ[結線]することで音を創る

冨田勲が創りだしたシンセサウンドの特徴は、トミタ・サウンドと言われるオリジナリティ溢れる音に特徴があります。

現在のシンセは、最初から凄い数のプリセットサウンドが入っており、音作りをしなくとも買ったその日から音を出して楽しめます。

ところが、冨田さんが写真1にあるようなmoogシステムシンセサイザーを日本での個人で初めて輸入した時代は、音を出すことすら一苦労。
もうこの逸話だけで、ブログが何本も書けてしまうので、それは別に紹介するとして、簡単に言ってしまえば、音を創りだす全ての装置が音の構成要素を合成するための機能で独立しており、それらをケーブルで結線しなければ一音すら音は全く出すことが出来ません。

写真1:在りし日の冨田さんと後ろのシンセが愛機Moog ModularIIIp(タワーレコードの広告より) 

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当然ながらメチャクチャに線をつないでも音が出ませんので、各装置の機能を理解しながら結線していかなければ音を創ることができません。

まさにゼロから音を合成する機械=シンセサイザーの名前のとおりの楽器で、ひとつの音色を作るために何本ものケーブルで結線し装置のつまみを調整しながら、微妙な音の変化の実験を繰り返すことで音を作る積み重ねだったのです。

故に、冨田さんはシンセサイザーによる音作りは、絵を描くときの絵具とパレットの関係という例えをよくされていました。
例えるなら同じ赤色であっても自分がイメージする赤色をつくるため様々な絵具の色を混ぜ合わせ(音色合成)、そして筆でキャンバスに何度も塗り重ねる(多重録音)作業とよく似ているとのことです。

冨田さんは、シンセサイザーでゼロから楽器や効果音などの音色を作りながら、壮大で多彩な音楽作品を創造してきたのです。


●トミタ・サウンドの真骨頂「ストリングス」


冨田さんが創りだしたサウンドの多くは、30年以上前の昔のシンセで作られたとはいえ本当に創造性に溢れ、しかも現在の最新鋭のシンセでも真似が出来ない音色も多数あります。

そのひとつが、ストリングス(オーケストラの弦楽器部)の音色です。

例として、次の作品を聴いてみてください。
Amazonのデジタルミュージックの視聴ページです。

金星(冨田勲)
ホラ・スタッカート(冨田勲)
(各ページのサンプル試聴のボタンで30秒ほど聴けます)
※Amazonデジタルミュージックキャプチャー画面

listening Tomita at amazon

非常に短い視聴用のサンプルではありますが、これらの曲で聴こえるストリングス・サウンドの質感は本物ではないけど実に華やかで生々しい色彩をもった音色ではないでしょうか。
冨田さんの作品は、ストリングスのサウンドが本当に素晴らしく、繊細な音から大編成の壮大なものから実に多彩な音色を他にも聴くことができます。

現在では、本物のオーケストラの音をデジタル録音(サンプリング)したものを加工したものをシンセで鳴らすことが当然となりましたが、当時はそんな便利なものはなく、先にご紹介したシンセの各装置を結線をして純粋に電気的な合成によってのみで音を創っていたのです。

それでは、各装置の結線と調整で試聴していただいたストリングスの演奏表現ができるかというと実際はかなり難しいです。というか再現は不可能です。確かに写真2のような巨大でツマミが多数ついた機械なので何でも出来そうですが、音楽的な表現を再現するには、シンセサイザーを応用しながら多層的で様々な複雑なプロセスがさらに必要なのです。

写真2:堂々たる威容を誇るMoogの代表的システム・シンセサイザー[System 55]

Tomita Mus moog

冨田さんはどうやって大編成の弦楽器の再現を行ったいたかというと、一つのパートの同じフレーズを何度も何度も、多重録音が可能なマルチトラック・テープレコーダーに重ねて録音をしました。

当時利用されていたマルチトラック・テープレコーダーがくるくる回りながら動いている様子を当時のCMで観られる貴重な映像です。BGMは全て冨田さんの作品で、純粋に電子音の合成だけで作り上げられたものです。



特設ステージで語られていた松武さんによると、ひとつのストリングスのフレーズ当たりで、冨田さんは少なくとも百回は重ねられていたとのこと!
そして冨田さんならではの方法として、それだけの音を重ねるなかで敢えてちょっと下手な演奏者の音が混じる要素を入れることで演奏にライブ感が出てくるそうで、試行錯誤で多重録音による音色合成のテクニックを開発されていかれたようです。

冨田さんにしか創れないサウンドは、このような気の遠くなるような作業があってとのことだと改めて実感しました。

さすがにテープレコーダーに重ねる作業は大変手間がかかるため、時代が進むにつれ重ねる分の音の基本となる発振器(敢えて例えるのなら弦1本分)を増やすことで代用し、トミタ・ストリングスを再現しようとした試みが、写真3のSYSTEM-100Mという小型のシステム・シンセサイザーを使った事例です。

写真3:SYSTEM-100Mの3ラック分。この写真の手前の2台のラックは、全て発振器で10基分入っており、1基あたり2つに回路が独立していますので、この写真のラックだけで何と20個もの発振器がセットされている状態です!

SYSTEM-100M at TOMITA Memorial Museum

このシステム・シンセサイザーは、必要な装置を自由にセレクトしてマウント(1台のラックに5個収納)することで、自分専用のシステムをカスタマイズしながら組み上げることができますが、冨田さんは、なんとこれに発振器だけを何十個も組み入れて構成されたとのこと!
つまり、同時に鳴らせる発振器の数を増やすことで、その分多重録音で音を重ねる手間を少しでも省くことができるよう工夫されていたのです。

写真4:ちなみに、わがプライベートスタジオに鎮座しているSYSTEM-100M(10モジュール)このシステムはモノフォニックの基本シンセサイザー1台分を4基分搭載した状態のセットです。

System-100M.jpg

松武さんによると、このようないわば力技?ともいえる物量作戦を立てることで、多重録音の回数が減ったとはいえ好みのストリングスサウンドに調整するのには、数十個分の発振器のパラメーターを全て調整しなければならないので、これまた大変だったようです。ちなみに、そのあとの音色及び音量変化の調整は、やはりトミタ・サウンドの要であるmoogシンセで処理されていたようです。


●不自由の自由から生み出されるオリジナリティ

シンセサイザーの先駆者である冨田さんだからこそ、このように制作秘話にちょっとだけ触れただけでも、作品制作において大変な生みの苦しみがあったことが分かります。
松武さんによると、1日かけても、数小節やワンフレーズだけというようなことが多く、おそらく冨田さんのサウンドの95%は失敗(あくまでも冨田さんのなかで)で、残りの5%くらいが世に出たものとおっしゃておられました。

確かに現在は、技術の進歩によりシンセサイザーから音がすぐに出ることは当たり前で、あらゆるサウンドやリアルなサウンドがすぐに出せる便利な楽器となりました。
それは、とても良いことで、音楽制作がとても簡単に始められることにもつながり、一人でも大編成のオーケストラや様々なジャンルの音楽を作ることが出来るという一昔前なら夢のようなことが出来る時代になりました。そのプロセスを、シンセサイザーがまだ珍しい黎明期においてパイオニアとして全て一人で実現していたのが、まさに冨田さんなのです。

ところが、私の音楽制作を振り返ってみるに、冨田さんがやろうとした「自分がイメージしている音だからこそ自分が創る」というような、本来のシンセサイザーの一番の可能性を引き出すようなワークスを今の私はあまり出来ていないなぁとふと反省してしまいます。

冨田さんがシンセを触り始めた頃は以下のような、あらゆるハードウエアや環境上の制約がありました。

・マニュアルがない(あっても各装置の仕様書)
・先駆者ゆえに教えてくれるひとがいない(当然、WEBもないので、今みたいに検索で必要なノウハウもアップされていない)
・音色のひな型(プリセット)がない
・音色を記憶できない(作った音色をメモリーできるシンセは当時は希少)
・作った音が変化する(温度、湿度、電圧の変動に非常に敏感で不安定な動作)
・録音機材がとても高価(今でこそパソコンで何百トラックも録音できますが、当時だと24トラックでも車数台分)
・自動演奏がまだ数十ステップ程度(現在ではほぼ無制限ですが)
 etc・・・

というような風に、現在、自宅で普通のパソコンさえあればできることが、当時の冨田さんの環境では制限だらけという状況なのです。なのに、冨田さんの作品のサウンドは、現在の最先端の機材を使っても出せない音がある。

知恵と工夫と構想力、そして何よりも冨田さんの創造性がそれらの制約のなかでもオリジナリティを自由に織り成すことで世界的な作品を生み出してきたのです。

音楽制作において、現在では何でも揃ってしまいますが、その自由さに溺れてしまうことがないように、あらためて自分が何を創りたいのか、またそのうえで作品を創る原点を大切にしようと、冨田さんの伝説の機材に触れて思いを新たにしました。

それでは、また続きは後日にて。

<参考リンク>
●シンセサイザーの大家「冨田勲」御大への追悼文
●世界的シンセサイザー奏者の冨田勲氏が死去
●シンセサイザー界の巨匠「冨田勲」師考
●シンセ界の巨匠「冨田勲」と初音ミクとの世界初演!!!
●冨田勲と初音ミク~時空を超えたアーティストの饗宴~
●シンセ界の巨匠「冨田勲」と「初音ミク」のコラボ実現の秘密とは!
●初音ミクがアーティストとして登場!?YahooのPR広告企画が面白そう
 

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シンセの神様・冨田勲の機材(TOMITA Memorial Museum)レポ1 

さる11月4日~6日にかけて「楽器フェア2016」が開催されました。

様々なブログで、会場の様子はレポはされていますのでそちらに譲るとして、私は世界的なシンセサイザー・アーティストである故・冨田勲さんの往年の機材を展示したTOMITA Memorial Museumについてレポートをしたいと思います。

ステージに並べられた冨田勲さんが愛用した機材の数々。シンセの神様が実際に使用していた機材群に感激!

TOMITA Memorial Museum stage

ヴィンテージものの機材の一部。冨田さんの手による自作機や、ガリなどの雑音発生時に自らパーツ交換して使っておられた各種ボリュームの可変抵抗器が展示されていて、とっても貴重なものばかり。

TOMITA Memorial Museum vintage instruments


●「世界のトミタ・サウンド」を支えた機材が一堂に

 今回の特別展で展示された機材のほぼ全てが実際に冨田さんが使用されていた機材であったことです。ステージでは冨田さんとご縁があった日本シンセサイザープログラマー協会の面々と協会の会長である松武秀樹さんらが、機材に関する逸話を語られていました。

写真1:堂々たる威容Moog[System 55]を前に説明する松武秀樹さん

Tomita Mus moog with Matsutake

 私はてっきり冨田さんの機材は古くなって使わなくなっておられても、所有者である冨田さんの管理で保管しているのかと思っておりましたところ、冨田さんとご縁がある信頼のおける方々に貸与という形で日本全国に点在していたとのこと。なので、写真2にもあるようにそれぞれの貸出先に冨田さん自らがサインをして預けていらっしゃたようです。

写真2:TOTOやヴァンゲリスの名曲で使われた名機ヤマハ[CS-80] 冨田さんのサイン付き

Tomitas CS-80 

 実は、少し残念だったのが、冨田さんのアイコンともいえる代表的機材であるMoogのタンス型の大型シンセ(写真1:Moog Synthesizer System 55)は、冨田さんの所有のものではなく、この日のために動いている同型機を松武さんがご用意されたようです。実際に音を出しながら説明があったのですが、発振器であるオシレータ(VCO)の中身の回路は特別仕様となっていて、冨田さんが初期の頃の作品で多様されたMoog ModularIIIpだそうです(写真3)

写真3:在りし日の冨田さんと後ろのシンセが愛機ModularIIIp 

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●往年のリアルMoogサウンドの凄まじさ

 会場は至る所で各企業のステージでデモが催されていたので、演奏で鳴らされた音がカオスに溢れている凄まじい喧噪状態でした。そんななか、TOMITA Memorial Museumのステージで、松武さんがMoogの実機の操作を交え冨田さんがどのような音作りをしていたか、フィルターを共振させ鳴らしながら解説されていましたが、会場全体の喧騒をものともせず、スーっと耳に飛び込んでくるMoogシンセ・サウンドの生々しさにびっくりしました。
 
 純粋な電子回路から出力されるアナログ・サウンドが、音圧がありながらも周波数や倍音の構成が人間の耳にとっても馴染むような特性になっているためでしょうか?
 松武さんの説明では、Moogのアナログ回路で作られた音は、デジタルにより演算で合成された音のように綺麗で安定的な波形ではなく、オシロスコープで解析すると明らかに波形が歪んで不安定な揺らぎをしているとのこと。技術者にとっては、むしろ取り除きたかったはずのこれらの波形の歪や不安定さが、実際の音になって出てくると実に耳に心地良いものになっているのでしょう。
 
 当日、図らずもアナログとデジタルの出音の違いを、同じ喧噪の環境で体験できました。別のステージで、たまたまほぼ同じようなPAシステムで行われたデモでは、最新鋭のフルデジタルによるシンセサウンドが鳴らされていました。音程が高くなるにつれ、耳がキンキン痛くなり、音場感や音圧も平面的な音の塊のような感じがしてしまいました。ところが、そのようなことがTOMITA Memorial Museumのステージで出された往年のMoog System 55の音では感じるようなことはなく、どんなに音が高くなっていっても図太く立体感を感じる素晴らしい電子音であったのです。

 おそらくこのあたりの違いが、フルデジタルシンセが普及しても、なお失われることがない本物のアナログ回路によるシンセサウンドの魅力であると改めて実感できた次第です。

 さて、続きは、その2にて、レジェンドとなった作品で聴かれる世界のトミタサウンドを冨田さんが操作した機材でどうやって創ってきたのか、その秘密を引き続きレポをしてみたいと思います。

<参考リンク>
●シンセサイザーの大家「冨田勲」御大への追悼文
●世界的シンセサイザー奏者の冨田勲氏が死去
●シンセサイザー界の巨匠「冨田勲」師考
●シンセ界の巨匠「冨田勲」と初音ミクとの世界初演!!!
●冨田勲と初音ミク~時空を超えたアーティストの饗宴~
●シンセ界の巨匠「冨田勲」と「初音ミク」のコラボ実現の秘密とは!
●初音ミクがアーティストとして登場!?YahooのPR広告企画が面白そう
 

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シンセサイザーとアコースティック楽器 

音響工学や哲学的考察は抜きにして、雑談的にこのテーマを今回書き出してみました。

さて、唐突ですが、人はもし今と違う自分になる分岐点がどのくらいあったのだろうかと過去に思いを馳せるときがあります。

●人生の選択の分岐点

私の場合、しょっちゅうあの時あっちのほうを選択すれば、もっと違う人生になっていたに違いないかもと思うことが多く、どちらかというと後悔の連続のほうです。

今こうやって私が楽しんでいる音楽制作に使っている楽器はシンセサイザーのみで、しかも鍵盤をまともに弾くことが出来ません。
後悔というほどではないのですが、私が小さい頃、親がピアノ教室に通ってみないかと勧めてきたことがあります。
自分はどうも乗り気ではなかったようで、首を縦にはふりませんでした。

その後、シンセサイザーの鮮烈なサウンドにハートが射抜かれ、その後ライフワークとして楽器演奏が苦手なまま何十台ものシンセをかき集め音楽制作をするまでになっていました。

写真:私のプライベートスタジオ「Studio Einsten」の一角

Studio Einstein 3

●もしもピアノが弾けたなら~

名曲の題名にちなんでというわけでもありませんが(^ω^)

もし、私がピアノ教室に通って演奏技術を習得し楽譜を読めたら、今より遥かに音楽の世界が広がったのかなぁ?と想像します。

もしかしたら、ピアノが自由に弾けてアコースティック楽器の生音の良さに心酔していけば、刺激的だが電子的なシンセのサウンドには見向きもしなかった可能性もあるでしょう。
実際、中高生時代にとても仲の良い友達と、シンセとアコースティック楽器の不毛の論争をして物別れになり、アコースティックの素晴らしさは両者とも認めても、ついにシンセの音は相手にとっては、楽器としては認めない雑音であるという主張を取り下げてもらうことができませんでした。

私の場合、どっちも好きになっただろうなぁと思うと、むしろアコースティックもシンセサイザーも操れて2倍楽しい音楽ライフを楽しめたのかもしれません。

とまぁ、やり直しのきかぬ過去のことに思いを馳せつつ、今多くのシンセ機材を前に、やっぱりシンセ好きとなった自分にはシンセは良いものだとしか言いようがないかなぁと。

とりとめもない話で恐縮でした。

また制作や音に関わる話題を、風の吹くまま気が向くまま。

<参考リンク>
●シンセを使ったサウンド・デザイン考(自分の遍歴から)
●シンセの「音」って何でしょうか?
●シンセサイザーとはそもそも何ものか?

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シンセサイザーの神様[冨田勲]追悼番組のご案内 

シンセサイザーで未来の音楽世界を開拓した故冨田勲氏の功績を辿る特集番組が放送されます。

是非とも、お見逃しなく!

在りし日の冨田勲御大

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冨田 勲さん追悼 関連番組放送のお知らせ


ETV特集「音で描く賢治の宇宙 ~冨田勲×初音ミク 異次元コラボ~」
(2013年2月3日放送分の再放送)
【放送予定】5月29日(日)[Eテレ]前0:50~1:49 ※28日(土)深夜

NHKアーカイブス「理想の音を追い求めて ~冨田勲さんを偲ぶ~」
【放送予定】5月29日(日)[総合]後1:50~2:55
番組内で、1984年11月18日に放送した、NHK特集「冨田勲の世界~ドナウ川・光と星のコンサート」をお送りします。

「宇宙を奏でた作曲家 ~冨田勲 84年の軌跡~」
【放送予定】5月29日(日)[BSプレミアム]後10:50~深夜0:00
作曲家・冨田 勲の音楽を堪能するスペシャル番組。アニメ「ジャングル大帝」、「きょうの料理」、NHK大河ドラマなどの音楽で冨田の軌跡をたどります。



<参考:在りし日の貴重な冨田師匠の姿>

[冨田御大が出演しているテレビコマーシャル]



[冨田御大がCASIO CZ シリーズのテレビコマーシャルに出演]




[冨田御大のプライベートスタジオを訪問するマイケルジャクソン]:シンクラを弾いている。




<参考リンク>
●シンセサイザーの大家「冨田勲」御大への追悼文
●世界的シンセサイザー奏者の冨田勲氏が死去
●シンセサイザー界の巨匠「冨田勲」師考
●シンセ界の巨匠「冨田勲」と初音ミクとの世界初演!!!
●冨田勲と初音ミク~時空を超えたアーティストの饗宴~
●シンセ界の巨匠「冨田勲」と「初音ミク」のコラボ実現の秘密とは!
●初音ミクがアーティストとして登場!?YahooのPR広告企画が面白そう

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シンセサイザーの大家「冨田勲」御大への追悼文 

私の旧知の友に、nemoさんというシンセサイザーのスペシャリストがおります。何が凄いって、古今東西の名機から珍品レアな機種まで、それらの機能と特徴を大凡知り尽くしているという博識ぶり。
当然、シンセを使ったアーティストやクリエーターにも明るく、この度の冨田勲氏の逝去に、彼も私と同じく喪失感を伴う大変な悲しみの渦中にあります。

その彼から、冨田勲氏への追悼となるコメントをいただきましたので、許可のもとご紹介したいと存じます。

彼のような世界中のシンセやその業界を知り尽くした人による解説で、まさに「神」に等しい存在である冨田氏のお人柄、そして稀有なる天才たる才能の片鱗を知っていただくことで、レジェンドである冨田氏の追悼となればと存じます。

以下、nemoさんによる追悼文です。(一部、実際の楽曲のYouTubeリンクと写真及びキャプションは、私の責において貼っております)


冨田御大は、私にとってヴァンゲリス御大とならぶ、双璧の神であった。

氏は、シンセを導入する前から既存の楽器に物足りず、たとえばオーボエとフルートとの中間のような音がほしい、それも二つをユニゾンさせたのではダメで、ほんとうに音色として中間の音がほしい、などと、ひんぱんに思っていたらしい。

氏が若かりしころ、NHKに居候してたら、明日から料理番組が始まるから明日までにテーマ曲を作って欲しいと夜の8時ごろになって無茶ぶりされ、たまたまマリンバ奏者とパーカッション奏者がいたので、ではそれでできる曲をってんで「きょうの料理」のテーマ曲を15 分ほどで書き上げ、その晩のうちに録音してしまった。
そんな曲でも、ちゃんと伴奏に、まな板を包丁でたたくような音がパーカスとして入っているから凝ってる。

「きょうの料理」




「新日本紀行」のテーマ曲をつくったときは、拍子木の音にだけ NHKの非常階段を使って天然リバーブをかけた。まだシンセはおろかエフェクターもほとんどなかった時代であり、わざわざ録スタからマイクとスピーカーとを非常階段までひっぱってきて録音したらしい。

「新日本紀行」のテーマ曲




NHKには、当時まだめずらしかったイコライザーとかがあり、氏はこれをたいそうよろこんで使い倒し、音を加工しまくり、それでしょっちゅうサウンドエンジニアに怒られては喧嘩していたらしい。

あるとき、イギリスに「ふぁず」というエフェクターがあると聞いた氏は、さっそく友人に頼んでそれを送ってもらい、ためしにそれで音を加工し出してみたら、これが聴いたことも無いかっこいい音がする。さっそく氏は、時代劇のワンシーンで、侍が二人、刀を抜いてにらみあっている場面にて、これを使い「びゃーん」とオーヴァードライヴしたサウンドを流し、そのかっこよさに悦に入ってたら、レコーディングエンジニアがヘッドフォンをかなぐり捨て怒り出し、曰く

「音が歪んでますっ!!」と(爆)。

まぁ当時は原音忠実、ハイファイに録音することが至上命題だったわけで、氏のように音を歪ませて加工するなどという発想は、ぶっちぎりすぎて誰も追いつけなかった。

そんなふうに、エンジニアと喧嘩ばかりしてきた氏にとって、moog IIIpとマルチトラックテープレコーダーとは、理想の楽器だったのだろう。羽田空港事件をはじめとする苦労話の数々は、まさに先駆者ならでは。だいたい、氏がシンセ音楽で売れて押しも押されぬ存在になり、'80 年代前半のNHK大河ドラマ「徳川家康」の音楽を任されたときも、「生のストリングスを、ストリングスらしくない音で録音したい」などと言い出しては、またサウンドエンジニアと喧嘩。
「シーケンサーと同期させたいから、生楽器演奏者にヘッドフォンかぶってもらってクリックを聴いてもらい、それに合せて演奏してもらいたい」 と言っては断られ、仕方なく Roland MC-8 のテンポインジケーターの LED を、ビデオカメラでドアップで撮影し、それを録スタのあちこちにおいたモニターテレビに映し出し、大きなピンボケ映像となったLEDの点滅テンポに合わせてオケに演奏してもらったという。
今ではヘッドフォンかぶってクリック聴きながら録音なんて、ごく普通に行われていることだが、YMOが大人気であった当時ですら、まだ一般的には拒否感が激しかったのだ。

写真1:moog IIIp

moog IIIp Img

大河ドラマ「徳川家康」OP曲




それでもなお、みずから信じた道を突き進んだ氏あってこその、今の DAW全盛期。

余談だが、'80 年代になって TPO という日本で初めてフェアライトCMIを使ったグループがおり、彼らは冨田御大の羽田空港事件を良く知っていたので、フェアライトCMI を輸入するにあたり、鍵盤は「楽器です」、CRTモニターは「テレビです」、ASCII キーボードは「タイプライターです」、CPU含む本体は「七宝焼きの窯です」などといい加減な申告をし、無事に税関を突破している(爆)。

写真2:フェアライトCMI(確かに下部にある本体は窯にみえなくもないですねw)

フェアライトCMI


さて、私が生まれて初めて買ったアルバムは、アナログ盤の冨田版「惑星」。すでにテレビ番組の BGMなどでヴァンゲリスなどに傾倒していた私だったが、当時は情報がとぼしく、誰の曲か分からず、ただシンセサイザーというものに強く憧れていた。それで試しに冨田版「惑星」を買って聴いてみた。そして初めて本格的に耳にするシンセサウンドの幽玄さ、奥行きの深さというか次元感覚に、私は、聴き返すたびにどんどんはまっていった。極端なパンニングや音の遠近感を利用した音場空間演出にも、大いに魅了され、未だに影響を受けている。

冨田勲 - THE PLANETS/組曲 惑星:Jupiter/木星よりthe Bringer of Jollity  (1977)




また冨田御大は、宅録という概念も、私に教えてくれた。俺一人でも音楽ができる!!という夢を与えてくれた。

それからはレコード屋へ通い倒し、シンセサイザー音楽という当時ならではのコーナーへ入りびたり、なけなしの小遣いはたいて、冨田御大やヴァンゲリス、ジャール、などなどのアルバムを、かたっぱしから買い集めることになる。

歳月は流れ、数年前には、冨田御大のコンサートにも出かけ、そこで CDにサインしてもらい、握手までしてもらった。この手が数々のシンセを操作し、百回オーバーダビングしてはサウンドをつくりあげてきたのだと思うと、シンセの歴史そのものと握手している気がして、私は失神しそうだった。

未だに、冨田御大の「惑星」の音が出るシンセには、出会ったことが無い。それくらい氏のサウンドは、凝り凝りに、ねり込まれている。

ご逝去あまりにも急すぎ、ただただぼうぜんとするばかり。
とにかく、音楽を作るのに使われた天界のウェーヴとともに、天界の果てへ終わりなき旅に旅立たれた冨田御大の、その旅路の安らかなるを祈願する。

[冨田御大が出演しているテレビコマーシャル]



[冨田御大がCASIO CZ シリーズのテレビコマーシャルに出演]



[冨田御大が監修した CASIO Cosmo Synthesizer の映像]:サンプラー ZZ-1 に加え、CZ音源がいくつもラックマウントされているのがわかる。プロトタイプしかつくられず量産されなかったレアな機種。冨田御大のライヴで使われた。




[冨田御大のプライベートスタジオを訪問するマイケルジャクソン]:シンクラを弾いている。





引用終わり

nemoさん、とっても貴重な逸話、そして在りし日の御大の姿をうかがえる映像のご紹介、誠にありがとうございました。

シンセサイザーの創造世界の素晴らしさを、世界中の音楽を愛する人々にもたらされた冨田勲氏のクリエーティビティと偉業の前に、あらためて謹んで哀悼の意を表します。

<参考リンク>
●世界的シンセサイザー奏者の冨田勲氏が死去
●シンセサイザー界の巨匠「冨田勲」師考
●シンセ界の巨匠「冨田勲」と初音ミクとの世界初演!!!
●冨田勲と初音ミク~時空を超えたアーティストの饗宴~
●シンセ界の巨匠「冨田勲」と「初音ミク」のコラボ実現の秘密とは!
●初音ミクがアーティストとして登場!?YahooのPR広告企画が面白そう

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